高城 剛さんが語る大きな書店の意義

昨日、届いた高城剛さんのメルマガに、以下のようなコメントがあった。

 

執筆に適した街は、書くテーマによっても異なるのでしょうが、基本的には、それなりの大きな街を選ぶようにしています。

その理由は、ふたつあります。

ひとつは、大きな書店があることです。
いまや、書籍の9割以上はAmazonで購入するようになりましたが、街をブラブラしながら、フラリと入って、あらゆるジャンルの書籍に目を通すのは、なによりもの頭の活性化につながります。

Amazonの良いところでもあり、また、これでいいのかと思うのは、レコメンドエンジンが、あまりに優秀な点です。
顧客の購買や検索の履歴データから最適なおすすめ商品を提案し、このフィードバックを元に、最近では「スマートスピーカーAmazon Echo」やドローンで配達する「Prime Air」などでもマシンラーニングが活用され、いまやレコメンド・エンジンは、Amazon帝国のコア技術に成長しました。
しかし、驚くことに数週間前に開催されたAmazon AWS年次開発者イベント「AWS re:Invent 2018」の会場で、なんと、このレコメンドAI「Amazon Personalize」を外販すると発表したのです。

今後、レコメンドAIで世界一の企業になったAmazonと同じように、他の企業が自社データを組み込むだけで、独自のレコメンドシステムを構築できるようになります。

つまり、「大レコメンド時代」が到来します。

こうなると、「なにかに偶然出会う」可能性は、年々低下するはずで、ピンポイントで狙うアドテクすらも完全に駆逐されていくことになるでしょう。

そこで、「なにかに偶然出会う」可能性を求め、まるでAIの呪縛から解き放たれるように、ひたすら書店を歩くのです。
料理本から実用書まで、普段なら訪れることがないコーナーまで書店をくまなく歩き、座ってたら見向きもしないだろう書籍を手に取ります。
いわば、レコメンドエンジンが「AI様のお導き」だとしたら、それに対抗するように「神様のお導き」の機会を失わないようにしようと考えます。
それゆえ、執筆期間は、歩き回れる大型書店がある大都市に滞在するのです。

 

『高城未来研究所「Future Report」Vol.396/Part1』(2019年1月18日発行)

 

レコメンドエンジンがさらに発達すると、いつの間にか「過去の」自分にフィットしたレコメンドに囲まれて、「未来」の自分に広がりがなくなってしまうということだろう。 

 

現時点では、オフライン環境を作り、圏外を求めることで、常時オンラインから逃げることができる。

 

ただ、さらにその先の未来を考えると、リアルな書店においても、ITが侵食し、レコメンドエンジンが働いていくはずだ。そうなると、お金を払わないと、レコメンドから逃げ出せない世界が来る。レコメンド圏外が贅沢になるはずだ。

 

また、書店は、より独自性を求められ、俺様リアル書店が生き残っていく。さらに、いかにリアル書店の中の広告を排除できるのかも重要な要素だ。リアル書店の未来は、ひらめきを創出する場である。ひらめきを創出する環境を整えるべく、温度、湿度、照明の明るさ、階数、コミュニティ機能などが必要になってくる。

 

リコメンドをする主体の問題もある。高度にレコメンドエンジンが発達してくると、どの企業からのレコメンドも似たり寄ったりになってくるはずだ。その時に、人によるレコメンドが価値を増してくる。AIと異なり人は、知識の蓄積機能も劣っており、時と場合により判断に揺らぎが生じる。その人ならではの特性を使って、レコメンドが行わられれば、多種多様なレコメンドが生じる。

 

レコメンドした人の、レコメンド特性をデータとして取得し、それをAIに取り込むことで、多種多様なレコメンドエンジンが作られる。そして、その人が死んでも、レコメンドエンジンは生き残り、無料で提供され、その人の名前が残るという世界。

 

世界の大都市にある書店を巡り、未来の書店のヒントを見つけていきたい。

 

2019年1月19日公開

 

以上